『1本のゲームが私の人生を変えた』第1章

「ごめん、別れよう。もう好きなのか分からなくなった」

 

高校1年の初夏。

新しい生活にまだ慣れず、緊張して毎日を送っていた頃。

中学2年から付き合っていた彼氏から、そんなことを言われた。

 

今でもよく覚えている。

携帯のメールで、そう告げられたことを。

 

小・中と同じだった彼は、高校に上がる時、他県へ。遠距離恋愛になった。

高校生で、遠距離恋愛。

今思えばうまくいくわけがなかった。

お互い、まだまだ子どもだったから。

自分のことで、いっぱいいっぱいで。思いやる気持ちなんて持っていなかった。

 

それでも、そのときは一生懸命だった。

本当に好きだったし、ずっと一緒にいられると思っていた。

このままでいれば、最終的に「結婚」するんだろうと思っていた。

少女漫画の結末と同じように。

ハッピーエンドで。

相手の親も、私のことを気に入って可愛がってくれていた。

特に喧嘩をしたこともなかったし、周りの友達も「お似合いだよね」なんて言ってくれていた。

「わかんないよ」なんて答えつつ、満更でもなかった。

 

彼も、学校では見せない姿を私に見せてくれていたし、

甘えてくれたし、

頼ってくれたし、

守ってくれた。

中学生ながらに、デートっぽいこともした。

遊園地へいったり、映画を見に行ったり。

買い物に行ったり、ボーリングに行ったり。

 

全部、全部、幸せだった。

順調だった。

私は、彼を好きだったし、だからこそ「信じていた」。

今思えば、

 

とても一方的に、身勝手に。

 

中学の卒業式を終え、

彼は単身、寮のある他県の高校へと行った。

 

「行きたくない」「離れたくない」

別れ際にそういった。

それが、私とだったのか、友達とだったのか。

とにかく、そうやって涙ながらに不安を打ち明けてくれた事も覚えている。

普段からあまり感情を表に出さない、おとなしいタイプだったので、

その時、はっきり伝えられたことが意外だったのだ。

 

だから、私は、向こうも同じように「一緒にいたい」と思ってくれてるんだ、と。

素直に嬉しかった。

 

しかし、高校に上がると、お互い環境の変化についていくので、精一杯になった。

新しい学校、新しいクラス、新しい部活、新しい友達・・・。

一方、向こうは寮生活なので、携帯も気安くさわれない。

電話も安々とはできない。

電話が来たかと思えば、寮内の公衆電話で1分程度。

まともな話なんてできるわけもない。

新しい生活に疲れていた私は、電話口で彼の声を聞いて泣いてしまうこともあった。

 

正直、彼はそんな私にも疲れていたんだと思う。

「俺だって、全然違う環境でも頑張ってんのに。辛いのはお前だけじゃない」

そんなことを思っていたのかもしれない。

ついぞ、聞くことは叶わなかったけれど。

そして、同じ境遇の女の子がいれば、そちらになびくのは当然のことで。

 

今なら、相手の気持を慮って言葉をかけることもできる。

大変だよね。私は知り合いもいるし、大丈夫だよ。

何かあったら遠慮なく言ってね。話ぐらいは聞けるから。

そんなふうに、寄りかかれる存在になれるだろう。

 

けど、その時は

【身勝手】だったのだ。

【自己中心的】だったのだ。

【私を見てほしかった】のだ。

 

そうして生活の変化の波に飲まれるように、私達の心も、ぐちゃぐちゃになっていった。

そして、波に飲まれて、見えなくなっていった。

暗い、暗い闇の底にいるように。

お互いの距離も、心も、分からなくなった。

 

高校生になって、2ヶ月ぐらい経った時。

その時は、訪れた。

 

「ごめん、別れよう。もう好きなのか分からなくなった」

 

メールの文面を見たときは、「やっぱり」と思った。

最近メールの数も減っていたし、「好き」という言葉も言ってくれなくなっていた。

 

なんとなく、感じてはいたのだ。

向こうの気持ちが、私から離れていることに。

 

でも、見て見ぬ振りをした。

 

きっと、気のせい。

私の勘違い。

向こうだって、新しい生活で疲れてるだけ。

 

そう、思い込むことにした。

シラナイ。

ミタクナイ。

カンケイナイ。

 

でも、現実は甘くなかった。

 

私は、「裏切られた」。

 

そう、思ってしまった。

これまた随分と【身勝手】に。

 

大人から見れば、

依存してただけでしょ?

相手の気持を考えてなかっただけでしょ?

いくらでも、指摘はできる。

 

実際、彼と結婚の約束をしていたわけでもない。

中学生・高校生の付き合いだ。

今なら、続く可能性が低いことも分かっている。

 

それでも、その時は、

本気だったから。

彼を信じていたから。

一方的に、身勝手に、

「この人は一緒にいてくれる」なんて。

 

だから、私にとっては「裏切り」だったのだ。

 

あぁ、こんなに好きになった人でも、離れていくんだ。

誰かに一生懸命になっても、どっかへいっちゃうんだ。

 

高校生ながらに、私は

どれだけ自分が好きになっても、いつかは離れていくかもしれない。

それだったら、誰とも深い付き合いはしない。

それなら、私は傷つかない。

 

そうやって、自分を守ることにした。

 

だから、人を好きになることを、やめた。

信じることを、やめた。

 

本当に、身勝手で、私の勝手な思い込みで、向こうを「信じていた」ワケだけど。

それで、勝手に傷ついて、勝手に裏切られて。

子どもだなあ、と今なら思えるけど。

 

その時は、本気だったから。

そして、誰かに求められている自分に、安心できたから。

私の価値は「誰かに必要とされること」だったから。

 

現実の人は、裏切る。

 

そう、思い込んだ。

 

そこから、おとなしく、目立たず高校生活を送っていた。

小学校の頃から続いていた趣味のゲームを支えに。

学校の勉強も、部活もほどほどに。

波風のない生活をしていた。

 

心の何処かで、人を信じたい気持ちと、好きになりたい気持ちを抱えながら。

自分でも気づかない、心の奥底で。

あの楽しかった日々をしまっておきながら。

 

心を、闇にして。

見えないようにした。

見ないようにしていた。

 

そんなある日。

友達が、私に1本のゲームを貸してくれた。

 

「『遙かなる時空の中で』・・・? 聞いたことある」

「ゲーム好きなら、やってみて!」

 

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